天蓋の花[




夜毎、浅い眠りを訪う影がある・・・。
気配は日増しにこくなっていく。


すっと、ひやりとした手がおのが指先に愛しげに触れやわらかく握りこむ。
毎夜、毎夜。
そうして儚いような冷たいいとしさ、だけをその指は語るのだ。

気配は生前のままの姿ではないのか、それとも夢の証なのか。
土方は年若い恋人の顔を見ようと目をあけたくとも。
霧のようなものが邪魔をするかのようしていて、何も見えないのだ。


そして目をしっかり閉じてしまえば、真紅の花の咲乱れる景色が婀娜にも美しくも浮かびあがる・・・。


これは、ここを夜毎訪いながらもただひっそりと触れていくだけしかしない恋人の思いにならなかった
怨嗟の花か、ああ夢など覚めず、此花にいのち全てを吸取られてしまえたらと、危険で甘美な陶酔に男は酔った。



朝など、来なければよいのにと夢現の男は願った。