『かぐやひめ』



「うあっ、きれい・・・。」

淡くうすい月が浮かんでいた。

沖田は無邪気に笑っていう
「見て見て、土方さん。とっても綺麗ですよ」

「ね、土方さん。手かして」
いったそばから、すっと土方の手を沖田はとった。

そして一緒に月にかざす、
「こうすると、なんか不思議でしょ」

たしかに何やら、不思議だった。
淡い月の色が二人の手の奥で、たゆたうように浮かんで見える。




沖田はにこにこしながら
そのまま、そのままその手を握りこみながら

「月って、歳さんみたいだなぁ・・・。すごく綺麗でやさしい
から」

そして言った。
「おれ、月が大好きなんです」

土方はしらず、赤面した。
だが沖田はますます幸福そうに笑って言う。

「土方さん、大好きですよ」

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『カエル』


「はじめさん、これ」
いやに機嫌がいいらしい、調子っぱずれにハナウタなんぞ歌っ
ている。


ほいっと沖田がなにやら突出してきた。
なんだ・・・?
ピョンとそれは、斉藤の胸元に飛びこんできた。

へ? カエル・・・。か・・。

一瞬おどろいたが、斉藤はたいしたことでは
おどろかない・・・。


沖田はこういう時、とくにわからない。

思わず眉がよったのか、
沖田がむくれた。

「なんだよ〜、せっかく見つけたのにぃ。
可愛いでしょv」

むくれた顔が、なんだかものすごく子供っぽく見えた斉藤は
思わず声をたてて笑った。

沖田がきょとんとする、ますますおかしい・・・。


あぁ、もうそんな時期なのだと思いながら斉藤は笑いつづけた。

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『寝たふり』

こっそりと寝台から土方は、眠る大鳥を起こさぬように。
抜け出していく。
太平楽な寝顔だと、思いながら何故か愛しく思えるから不思議
だった。

(ふっ、普段は気なんか合うはずもねぇのになぁ・・・。)
そう思いながらも男のいかにも安泰な寝顔は、土方の心を宥め
た。


ふいと、その手が布団から投げ出されているのに気付いた土方
は、すこし逡巡したのち、その手をとった。
なんの他意もなかった、しまってやりたくなっただけだ。

握りかえされて、思わず土方は息を飲んだ。
男は眠っている。

だが、土方はドキリとしてしまい妙に居心地がわるく、
しばし固まってしまった。

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『朝寝』



ふうと気だるげな風情で伊庭は煙管盆を引き寄せた。

甘い情交の余韻が男の横顔をさらにうつくしく見せていた。
ふいと、腕がのびてきて。
その吸いさしを奪う。

こほこほと、奪った相手はむせた。

伊庭はなにやら、慌てて、沖田を見た。


むせつつも、沖田は笑っていた。

「まっず〜、何なの、これ美味しくない」

思わず伊庭も笑う、先程までの気配など、とうに二人はない。

「宗さん、はじめてかえ。ふふっ、はじめてなら仕方ないさね


「ふふっ、そぉかなぁv よかったですよ〜。わかだんな」

思わず、伊庭はがらにもなくコホコホとむせて、あぁまいっち
まったなぁ・・・。
とぼやいた。

沖田はきゃらきゃらと、さも楽しそうに笑う。


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