『出陣』
熱い、酷寒の北の果てに今自分はあるというのに・・・。
夢の名残りの炎が燻ぶる様に、冷たすぎる肌に刺すような風を土方は熱く感じた。
もうすぐ、その炎は焼きつくすだろう。
その瞬間、おそらく俺は、満ちてしまう。
無二の友を喪った焦燥も、どうにもならなかった若い恋人とのわかれも、忘れて。
このなにものも寄せ付けぬかのような冷たい大地は、すべてを飲みこむだろう。
ただ、未練とは知りながら思う。
願わくばこの死の間際には、お前の不思議と透明だった眼差しを想いたいと。
弟のように、しかし時にすべて見透かしていたような不思議な情人・・・。沖田、おめぇを俺はきっと、思う・・・。
たとえ、それが感傷だったとしても。
明日が最期だ。