水底




「後悔してるの? おれと、こんなふうにしてること」

 甘い、甘い男の声だ。やわらかい毒をふくんで、しっとり吹きこまれてゆくようだ。こんな

「っん、ふ。あぁ総司、総司、総司・・・」

 いつからだ、オレが変えちまった。悔いても、悔やんでもまだなほ愛しい、そしてどこかせつなかった。

「ああ、おれ。あんまり可愛くって、貴方が。けど、おれなんて貴方にとってはただの駒。使えなくなったら、
ころすの? それとも、それもしてくれないの? 歳さん」

 歳三のやわらかで白い体を、上から順に緻密にたどっていく沖田の指とくちびる。とめられぬ喘ぎも、
聞こえていても答えられぬも沖田のせいというのに。


「総司、たのむっ!! 焦らさねぇで、くれ。そうじっ」

 顔を覗きこまれて、唇がそっと瞼のふちを辿る。愛しげに幾度も幾度もいくども。そうしているうちに
沖田を感じた、幸福感のあまりに涙が零れる。
愛しい、いとおしい、いとしい男。 

 やさしく涙を吸いとり、こめかみを撫でながら

「ねぇ、歳さん。おれをころしてね」

 思わず、喜悦のゆめから引き摺りだされた気がした。恐ろしいまでに感情のない、
静かで深い湖のような目だった。

 そうじ・・・。なんで、そんなこというんだ。
 知っているでしょう? だからおれを、殺して。
                   オレヲコロシテ。