『戀の淵』
土方さん、歳三さん。
歳さん・・・。
いま沖田は土方を副長という。
二人きりの時でさえも・・・。
決定的に、何かがいつのまにやら変わっていた土方が気がつかないうちに。
だが沖田は、夜も更けたころひっそりと訪なう……。
いつからか、そんなふうに。
何故かはわからない、土方にとって沖田は弟のような、そんな相手の筈だった。
なのに。
沖田が変わったのだ。
土方の恋情、おそろしいまでの執着を無邪気にあったような沖田が知っていたに違いない、いくら打ち消してもそうとしか思えなかった。
これは何だ?
今、おれをその腕に抱きじわじわと沁み込むように翻弄し、支配して・・・。
だが、その瞳はゆれることもない。
ならば、なぜ・・・。
どうしてだ総司、なぜおれを。
土方はひたすら沖田の唇に、慈しむかのようなやさしい指に。力強くおのれを乱す熱い肌に酔った。
だが沖田の瞳だけは……、清く無垢だった。冷たくさえ見える清浄な色を宿すだけ。
あぁ、これは何なのだろう?
だが今この瞬間だけは、ただ・・・。
土方は快楽におぼれながらも、沖田をみつめていた・・・。
一瞬たりとも沖田から、目をそらしたくは無かった。
ふっと沖田は微笑する、土方が見たこともないほど澄んだ笑み…。
刹那、沖田になぜか土方は伝えなくてはいけない言葉があった気がした。
だが・・・。
土方の口からは、悲鳴のような嬌声がもれただけ。
土方をその腕に抱きながら、沖田は…、そう沖田は。
深い快楽の淵にありながらも土方は思った。
もう全てが・・・。
すべてが変わってしまったと。
それでも沖田に、縋るように土方は懸命にその痩せた肩に腕を回した。
アイシテル、あいしている、愛して。