『決別』



「行くんだね。平助」

ぽんぽんと、気安いしぐさで沖田は藤堂の背中にふれた。

「うん、総司。おれもう決めたから、変えられない。次にあったら斬りあいかなぁ」

「養生してよ、総司。斬られるなら総司がいいんだ。だから」

平助の瞳からは涙があふれおち、とどまることをしらないようだった。
思わず、沖田は藤堂を抱き込んだ。


「うん、うん。平助ありがとう。」

いつまで、二人はそうしていたのか。

春のも盛りの頃なのに。
二人とも。すでに互いが今生では会えないと知っているのは。
どこかやはり、寂しいものだった。

(おれたちは、鬼なのに・・・。)
(鬼だって、泣くんだよ。)


鴬の鳴いたのを聞いた気がした、あぁ春なのだ。