『闇での油断』
うっかりという感じで押し倒された、酒も入ってはいた・・・。したが。相手は自分よりも酒に弱いの
にとか思ってしまったのか・・・。
知らずこんな状況なのになぜか「アハハ」と笑ってしまう沖田だった。
人間予想外のことには時として笑ってしまうものなのかもしれないが・・・。
ぐいぐいと、血走った目で睨みつけてきながらそれ以上どうも出来ないらしいアイテに余計、ずれまく
ったことを考えた。
(どうしよ〜、歳さんてば、俺をどうしたいわけ? まさか抱きたいとか、ま、いっかァ)とか
(さいとー、ごめんね。俺べつに嫌いじゃない人ならいいかも…。)とか。
って、もしかして俺がするの? えー!! どうしよ??? などなど。所詮、酔っ払いであった。
はっきり、いって思考力が低下している・・・。
もし必死の覚悟で土方がこんなふうにしてきたなら土方が哀れであるし、「ま、いっかァ」と思われた
斎藤はもっとかわいそうだった。
だが沖田はぼーとしたアタマで笑っていた。
酔っ払いとはそういうもの(らしいw)
そんなこんなで沖田が考えていた間。
迷っていたのか恥らっていたのかわからないが、腹を括ったらしい土方がぐいと沖田を引寄せ
「オレはオメぇが好きだ、・・そ、そそ」
(そそそ???)相変わらずぽーっとしている沖田である、、まったくぴんときていない。
「そうじっ!! オレと・・・。オレと。おれが、いやオレは・・・。」
うーん、綺麗だなぁvvv なんてぼけぼけなことを酔った沖田は思いながら、沖田は土方の薄紅に染
まった頬やつややかに赤い唇の動きを眺めていた。
「総司・・・。」いやになまめかしく土方の目が潤んでいる・・・。
ふらふらと沖田が土方ににじりよったとき、
「沖田っ!」
肩で息をした斎藤が飛び込んできた。
ふだんの、冷静沈着がウソではないのか、と思うようなこの男の慌てた様子だった。
「ちっ」と舌打ちのような音が聞こえた。
「沖田」無言で斎藤がだきしめてくる。
心地よさに酔いも手伝ってか、沖田はうっとりとそのカラダを男に預けた。
「副長、沖田さんは酔いすぎだ。俺が介抱しますよ」
ぎりぎりに抑えてはあるが、その声は這うように低かった。
「いや、それには及ばないだろう。斎藤君、ここでやすませてやったほうが。」
「なら俺が。まだ近藤先生たちも起きていらっしゃいますし。」
「なに、俺は酒に弱いんだ、ここで休んでいくとしよう」
余裕の笑みを浮かべながらも、目論みが見事に失敗した土方だった。
油断した、酒好きの斎藤がかけ込んで来るとは・・・。
土方は自嘲しながらも。
甲斐甲斐しく沖田のはだけた布団をなおしてやったり、いかにも心配そうな斎藤に。
「やれやれ」と思いつつも、なぜか悔しいとは思わなかった。
(オレも詰めが甘いもんだぜ。)
あわよくばと思っていたのも本気だが、土方はほんとうに沖田が可愛いのだ。
恋なら、いくつでもある。だが沖田はこの世でひとり。
それが土方の気持ちをかすかに軋ませる、だがお前が幸せならそれでいいのだと・・・。
言えぬ気持ちを自嘲しつつも、納得させていた。
惚れに惚れ抜いた。しかし沖田が幸福ならばそれでよい・・・。
ふ、と言葉にならないおのれの純情を土方はまた嘲った。