2006/06/16
月が見ている。

さらりと、風にまかれるように一筋だけ
若者の総髪が乱れた・・・。


月を背にして、かすかにに息をみだれさせ、若者。いや
沖田総司はたったいま、自分が奪った命を
感情のこもらぬ目で、眺めるでなしといったふうに見下ろして・・・・

いるようだった。


その心中をはかるものは、たれもいぬし。
沖田自身ですら、わかっていないのかもしれなかった。


沖田は、いつかこの日が来ると
知っていた。


自分の中で何かかわるかに思えた・・・。


だが、何も
変わったようでは無かった。


不思議と月明かりと死者の顔が
沖田の心を凪ぎさせたかのようだ・・・。

ふと、月を振り仰いだ。

(あぁ、キレイ・・・。
まるで、あの人みたい。

あぁ、そうか私の全て。とっくにあの人のものだもの。)

ふっと、沖田は幸福そうに笑う。
それは穏やかな笑みだった。
それは、見る人があれば慈悲深くさえ見えたかもしれない。
優しげですらある微笑である。


だが、ここには転がる骸と
沖田しかいなかった。



2006/06/14


夢を見た。
不思議な夢だった、浅黒い背の高い男がにこりと
愛嬌のある顔をして笑っていた。


誰だろうと、顔をよくよく見るのだが知らぬ。

ただ、また会いましょう。

と言って笑う・・・。

夢だから脈絡が全くない。


はじめさん、はじめさん、はじめさん。


ユサユサと揺すられて目が覚めた・・・。
ア、沖田。


あんただったのかと、またも不可解さに
斉藤一はうなった。

よく見知ったはずの男の夢だったのだ。


なぜ、夢の中の己はこの男を知らなかったのだろう。


ふっと、ずっと昔に全く同じ夢を見たという記憶が甦ってきた。


なぜ、同じ夢を二度も見たのだろう・・・。
不可解である。


あいにくと、問題はそこじゃないだろうと寝惚けた斉藤に
教えるものはいなかった。



2006/06/14
拍手とメッセージありがとうございます!!

こんばんは〜!

※そうですね、想いのカタチは違うのかもしれない二人ですが、お二人に幸せな時間をと、思いながら書きました。切ないながらも心が安らぐ素敵なお話という、お言葉。ほんとうにありがとうございます!!
うれしかったです!
 

※A様「勿忘草」ほめてくださって、ありがとうございます。
ですね〜、避けては通ることのできない悲しい日だったと、思います><。A様のお話、ぜひ読ませていただきたいです(私はまったく、つきつめませんでしたが・・・。書くとしたら、途方もなく長くなるか、せつなさのあまりすっごく短くなりそうです・・・。)
いえいえ僭越などと恐れ多いです(^^)わたくしめの方こそ、沖田さんの心情がA様のお話に、似ているなぁと・・・。「同士」v
ありがとうございます! 良い響き〜**
「春のうた。」う〜ん、副長の片恋・・・。良いかも(^^;)
って、実はあれ沖田さんが、ほんとうはどういうつもりなんだか書いてる私にもわかってなくって・・・。「大好きv 土方さん」って平気で甘えまくる沖田氏がイメージでした(笑)
とりあえず、思いあってはいます。ただねぇ、土方さんの目から見たら、結構そうですよね(今、気がつきました。すみませんw^^;。)
感想、いつもありがとうございます。


※「春のうた」せつないとおっしゃっていただいて・・・。ありがとうございます!!
感想、どうもありがとうございました。

拙いというか、いつもながらに言葉たらずの話からいろいろ汲み取っていただけたみたいで、皆様、ほんとうにありがとうございます!!

拍手やメッセージを頂くと、ほんとうに励みになります!!
これからも、がんばりますね〜♪




2006/06/13
春のうた。

すうすうと、優しい寝息が静かに男をなだめた。

男は背中にもたれた温かい体温を感じながら、
さらさらと筆をはしらせた。


ふと、詠んでてみたくなったのだ。この優しいぬくもりを・・・。
残しておきたい。

激務と粛清の血の嵐、その中で男の心は癒される日など無いかのようだった。


ふいとは、煙たがれる自分の部屋へ訪れては何をするではなし。
菓子をつまみは、笑い。

何でもないような世間話をしながら、時に甘えるような仕草を見せる。


この十ほども、年の離れた若者は変わらない。
土方も知っているが、沖田は肺を病んでいる。知っていながら、
離してやることが、出来ぬのだ。
だのに、沖田は変わらない。沖田も己の病を知っている。

土方が驚くほどに、沖田は変わらなかった。


いま、げんに全て安心しきったように己の背に体を預けながら、たわいもない話をしていたと、思ったら。
この若者が子供の時と少しも、かわらず、そのまま寝入ってしまった。


だが、出来上がった句を見て土方は眉を顰めた。
沖田は春ではない、真実どれほど、春にたとえたくとも。
その温もりがやさしくとも、沖田は春ではないのだ。

沖田の剣は、沖田の心は・・・。


感傷を振り切るように土方は、その句を破りすてようとした。
だが、出来なかった。

沖田の今の姿も沖田には違わない。


したが、残してはおけないな・・・。
静かに土方は口元に笑みを浮かべた。

この句を俺はあの世まで、持って逝く・・・。


(総司、そのときおめぇに読ませてやる)

この男は、きっと確実に俺よりも先に逝く。


(待っていてくれるんだろう、いつものおめぇのままで。からかうなよ、オレの一世一代の告白を)

だが、きっと沖田はからかい混じりに笑うだろう、それでもその笑みを思い浮かべて土方は、なぜかよけいに幸せだった。

春の陽だまりのような、やさしい一時。







2006/06/13
勿忘草

素朴で優しい、優しすぎる人だった。
まっすぐに沖田は、その人を慕っていた。年の離れた兄を慕うように・・・。


やさし過ぎた人・・・。
それが不幸だったのか、幸だったのか。
その人を追えと言われて、最初からこの結末を何処かで
知っていたのかもしれない自分を沖田は、
もう悲しいとは思わなかった。


罪なら、あの人がすべてうけ負うのだから。


「頼む」と言われれば、従う。
それだけのこと。

慰めるように、その夜。抱きしめられて、請われるがまま、なすがままに抱いた情人が声も無く、苦しみを忘れるように己の愛撫に溺れていくのだけが、哀しかった、愛おしかった。

泣いているのは、私じゃない。


泣いているのは、私じゃない・・・。

ただ愛しさが勝れば、いづれ私はこのひとを憎むだろうか・・・。





憎むだろう、きっと。
その前に、狂うだろうか、私は。

そしたら、貴方の手で私を殺して。

だってもう私は朽ちてゆくのです・・・。


(だから、殺してね。おれを、ねえ、土方さん。そしておれを忘れないで、忘れないで。)



2006/06/13
拍手&メッセージありがとうございます。

※わー、ありがとうございます!!
 沖田さんが好きなので。メインでうれしいとのお言葉、私もうれしいです**
 すみません、下にも書いたとおり気がかわらない限りは期間限定です。短いあいだですが、よろしくお願いします。


※ごめんなさい。まったく無関係です。紛らわしかったですね(^^;)
 ですが、ご来訪ありがとうございます!


拍手やメッセージ、ありがとうございました!!
これからも、よろしくお願いします!



2006/06/12
拍手とメッセージありがとうございます。

※ご訪問ありがとうございます!!
それに、ずっと続けてほしいとのお言葉、今拝見して〜!
わあっ、ありがとうございます***

「はじめに」にありますように、「RIKA LAND」様のご好意で書き始めたので〜(^^;)
それにR様に頼りっぱなしでして。
うーん、サイトの作り方、一応お勉強中なんですが〜。なかなか・・・。絵とかセンスないほうと思うので。それに自力でって思って一回、試してみようとしたんですが。なんかビルダーあるにもかかわらず、これどうしたらいいの〜? って。途中で・・・。あぁ、ダメダメや〜。(あのここ、笑ってやってくださいましw^^;。)今のところ自信が・・・。へたれですみませ〜ん!(泣)

今、どうしても書きたいお話があるので。それが書き上げれなければ、ムチャ承知で続けるかもしれませんが・・・。
今のところは、三ヶ月限定です。

短い間では、ありますが。よろしくお願いいたしますね〜!!

拍手くださった方、メッセージくださった方。
いつも感謝です!!

ありがとうございました!



2006/06/11
其の花の名は。

風もない薄暮れどき。
二人の男が、気儘げに物寂しげにうらぶれたまち外れをゆく。

新撰組の鬼副長と京のまちで、恐れられている土方と。新撰組の一番隊を任されて、人斬りとさえ言われ同じく勤皇方には恐れられ憎まれている沖田総司である。

「暑い、暑いなぁ・・・。」

ぼやくように沖田が言う。
連れ立って歩く男に言うでなし、といった飄々とした風情だった。

「暑いと、なんだ」

「いえねぇ、こう言っちゃ何ですけど。何かどうも、いけないなァ・・・」

沖田はぽそと呟くように答え

「なんか俺たちも、有名になっちゃいましたねえ」

「当り前だろう。なんの為にここにいるんだ。今更のこと言うんじゃねぇ」

「あはは、そうですよね〜。副長」

「気持ちわりぃ、総司。そいつはやめろ」

沖田はついと歳三を眺めて。

「だって仕方ないでしょう。土方さんってば・・・。ふぅ、俺だって。さすがに今夜はいやだったんですけど」


沖田が鯉口を切った。
一陣の風が吹く・・・。

土方は感情の籠もらぬ眼で、斬り捨てられていく浪士たちを見ながら、思う。


(総司、今更だ。もうなんもかも変わっちまったな、それにおめぇを変えちまったのはこのオレだぜ。)

だからこそ、ことさら余計に可愛いのか。


俺とお前の行く道は、修羅の道。
お前は血飛沫の香る俺の華。



(おめぇは永遠にオレのもんだ、絶対に離さねぇぜ、そうじろう・・・。)

 歳三は暮ゆく日を背に、うすく笑った。



2006/06/11
拍手&メッセージ、うれしいです!! 

※A様、「情人」の沖田可愛いですか〜!!
うれしいです!! 沖田さん至上主義な私としては・・・。
しかも、A様におっしゃっていただけると勇気でますね〜v!
(基本的に、歳受けを多く扱ってらっしゃるサイト様には、どんな好きでも、感動してもリンクお願いできない小心者ですゆえ〜><)ちなみに、同じ理由で沖田攻めサイト様にも〜(泣)
へたれな自分がせつないです!!

勢いのまま、A様やM様にはお願いしちゃいましたが・・・。
好きでして、A様の書く土方さんがすっごく^^! 好きゆえに〜**
カップリングがぁ〜(泣)で。お願いできません。
なんせ、わたくしめ沖田氏至上!!w(^^;)

沖土ラヴと言いつつも、沖田せんせいが中心ゆえ。
それから感想、書ききれなかったところまで、汲み取っていただけたようで、恥ずかしながらうれしかったです!
!!
二人は、デキテマスw

片おもい風なのは、初心いんです(^^;)
斉藤さんが・・・。
ってか、沖田のみには勝手が違うというか・・・。
それゆえ、なにやら恋に迷いに迷ってます。斉藤さん。(苦笑)
すごく、良かったとのお言葉、じーんと来ました、感謝です(^^)! ありがとうございました。


拍手くださってる方、メッセージくださってる方。
皆様、ほんとうにありがとうございました!!

今後も、よろしくお願いしますね〜!!
では〜***、♪



2006/06/11
情人。(雨)

「ねぇ、斉藤、どっか行こうよ〜。こう雨が続くと、どうもさっぱりしなくって。ねぇ、ねぇ。ねえってば」

いきなり背中にどすんと男一人ぶんの体重が重なる。

「・・・。」

「あんた、本気っでときどき困った人だな」

「なによぉ、こんなにカワイイあたしなのに・・・。つれないったら」

にへらと、笑ってからかうように言っているのだろう。
目に見えずとも、目に浮かぶようだ。
斉藤は、何やらおのれでも釈然としないがこの男に、ひたすら甘い。自覚しているから、余計にタチも悪いというものだろう。

「重いぞ、沖田」

「ひっでぇー!! ハジメちゃん。どこが重いっていうのさ、重いっていうのは、こういうことでしょ?」

いきなり正面にまわられて、今度は体全部でのしかかられた。不穏ともとれる目付きをする浅黒い顔を、引き寄せて問うた。

「沖田、さっぱりしないんじゃなかったのか」

「ふふっ、こういうさっぱり仕方もありでしょ、一さん?」

斉藤の瞳を覗き込むようにしながら、沖田がほのかに笑う。

「今は駄目だ。俺も命が惜しい」

「へぇー、本気でつれないね。おれがお前をどうするっていうのさ。喰われるとでも」

「違うのか」


「相変わらずだなぁ斉藤は・・・。アンタほんとに正直すぎる」

がばりと、身を起こして沖田は今度こそ本当に楽しそうにくすりと笑った。


俺のすべてが、この男の手のウチ。悔しいと思えばこその意地張りも、さらりと躱されて。
なおも、愛しいのが可笑しい。

沖田一人の笑みひとつ、それだけが底の無い恋情のありかのゆえだろう、斉藤は自嘲を込めて思った。