2006/06/05
春よ、恋。

「案外と、へたなんですね〜!! これじゃぁ、あの人と趣味
もあうわけですね〜v」

妙に、うれしげで明るくそれでなんだか可愛く言われたことがあった、まだ江戸にいたころ。

それも恋敵と思っていた相手から、こぼれるよな笑顔で言われたのだから、たまったものでなかった。

普段は、嫌いだと隠しもせぬ態度の相手からの
とんでもない言葉と笑顔だ。



うっかり句を知られた、おそらく気のあう遊び仲間であった歳三から、さらりと伝わってしまったのだろう。
と思えば、怒る気も呆れる気もしなかった。

あんまり、可愛い愛嬌たっぷりの笑顔である。
言葉に思わず、つまった・・・。

苦笑しつつも。

「宗さん、あんたもお人が悪いねぇ。オイラみたいな男にも多少の瑕があったのが女にももてるのサァ」

なんぞと、くるし紛れに言い訳したのが更に相手にもわかったらしく。
それこそ、ぬけるよな夏のごとく沖田は、にこにことますます笑う。


今、歳三だけには知られてはならぬ初夏の面影である。
ふぅと伊庭は溜息を吐いた。

長い転戦のはて、再会した当時の想い人は今では良き友だ。
しかも、おそらく歳三は沖田を愛したのだろう。
当時、自分が思っていた通りに。


ふいと懐かしさに沖田のことを言葉にのぼらせてしまったとき、
土方は昔は無かった、憂いと切なさをにじませて言葉を濁した。



どこか沖田に惹かれた遠い夏の日は、ことさら若い青臭い恋だった。



2006/06/05
拍手、お返事!

拍手してくださった方、メッセージ下さった方。

みなさんに、とても感謝しています。
読んでいただけていると実感できて、すごく嬉しいです。
本当に、ありがとうございます!!!

6月4日

※伊庭沖楽しみです! というお言葉すっごくうれしいです。ありがとうございます!!
なかなか暗い話になってしまいそうで、筆が動かなくって(^^;)
すみません><
沖土、はい。今、一個思いつきそうなので。近いうちには小話に一個、のせさせていただきますね!

※こんばんはA様、「恋花」感想ありがとうございます!!
あぁ、そうですね。沖田さん確信犯ぽいかも(^^;)
斉藤に温かい言葉、ありがとうございます。
そうですね、「一さん」って、いい感じですね。私の頭の中での沖田さんはよく、「一さん」って言ってます(笑)「一ちゃん」も、結構多いです。w^^
言われてみれば、一さんが、沖田さんを。「総司」とかって呼んでるのって、あまり想像したことないかも・・・。
感想、本当にありがとうございました!



2006/06/04
恋花

相手の情熱にひきずられるようにして、うっかり結縁してしまった。


そう斉藤は思っていた。
だが、心底、惚れて深みにはまったのは己のほうかもしれぬ。
底の知れぬ男・・・。


抱いても、抱いても。真実、かわらぬ相手にいつの間にやら、振りまわされて。それでいて、いとおしい。

女を知らなかった自分ではなかった。
ただ、恋とういものを初めて、今、知ったかのような気がしてならない。


あかるい笑顔、そう夜に見せる気配など綺麗さっぱり脱ぎ捨ててしまう男が、いつのまにやら憎らしい・・・。

げんに

「一さん、どうしたの? そんな顔して。怖いよ、おれ、あんたがすっごく、好きだけど。こわいなァ・・・」

なんぞと、軽く言われてしまえば、何も言えはしなくなる。


いつも、この男のまわりは何故か、華やかで。
微か、せつない心持ちがする。


夜、すがるよに、俺を求めてくるくせにと。
なのに・・・・・・。


最初は、もとめられるがままだった。
だが、今はどこか、信じられぬ。


あれほど、この男に背中を預けられた昔の自分の純な友愛が恋しい。
あぁ、俺は惚れたのだ、この男に。
何処か、諦めに似た思いで斉藤は思わずにいれなかった。



どんな男かは、じゅうじゅう承知だったはず。
なのに、いっさい全ては夜の秘め事と

そう言われてしまっているかのような・・・。変わらぬ姿。


それでもただ、日増しに寂しげに細く囁かれてしまえば、それで終いだった。

「来て・・・。おれ、あんたが欲しい」


夜毎、夜毎にすがるように。
それだけで、もう全てがどうでもよい様な気がした。

あぁ、恋とは、なんと業の深いものなのか。


情人の肌に溺れるように、あちらこちらに唇を這わせながら斉藤は思った。



あぁ、俺だけなのだ、この肌に赤い花を咲かせることが出来るのは。
その悦楽が、どれほど己の心を狂わせようと、もう構うものか・・・。



せめて夜の闇の間、今だけはこの男は全て俺のものだ。



2006/06/02
沖田先生。

「沖田先生、ぜひ稽古をっ!!」


 誰でしたっけ? この人。いやに暑い感じ、いえいえ、あー熱い感じですねぇ・・・。
 
珍しいひとだなぁ・・・。ケイコが荒いって言われるオレなのに。
強くなりたい、なりたい、なりたい。って顔ですか〜。
とほぉ〜、オレあんま手加減できないのよー。

 一さんあたりに、頼んでほしいんだけどなぁ・・・。
まぁ、あの人、一見とっつきにくいし。

だが、何を思い出してか思わず、にやける沖田である。

おそらくは。
(ほんとはすっごく優しいんだけどね、えへへ〜vvv)

あたりだろう、だが沖田以外の者には不気味きわまりない雰囲気だった。


 一瞬、不気味さに身をひいた新入隊士である。

に、気がつかない沖田は妙に上機嫌になって。


「じゃあ、道場いきましょっか」
と、にこにこしながら。
飛び跳ねるような足取りで、少年を置き去りにした。



 なんとなく沖田の得体のしれなさに、熱かった少年の心も複雑で、こんな人に稽古つけてもらっても・・・?

 と、不安になっていた。



2006/06/02
拍手、お礼(^^)

※6月1日の方。開設直後にほんとうにありがとうございます。
 沖田さん好きでいらっしゃいますか。私もです!!
 更新、楽しみそう言っていただけて、とてもうれしいです。
 これからも、よろしくお願いいたしますね(^^)

※6月2日の方。伊庭沖おもしろいですか・・・。わぁ〜、有難う ございます!! おほめの言葉うれしいです。
 更新履歴ですね、あの〜、りか様にご相談している最中です。
 小話は、いまのところはほぼ毎日ペースですので、よかったら覘いてやってくださいませ。



拍手くださった方やメッセージくださった方、期間限定ではありますが、三ヶ月間、すこしでも皆様が喜んでくだされば、うれしいです!!
 
ほんとう、ありがとうございます!


                       (はるひ)
 



2006/06/02
※ 皆様、ありがとうございます。

拍手のお礼は、こちらでさせていただきますね。

サイト訪問までしてくださって、拍手おしてくださった皆様に感謝です!!

これからも、短いあいだですがよろしくお願いいたします。
                    
                           はるひ拝                             
  



2006/06/01
恋人は年下の男の子。

 今日は、二人で非番をあわせた。
遠出もたまによかろうと、昔のような二人の姿で洛外へ行く。

 
 帰りは、しっぽりとかとなにやら画策しているらしい歳三に。相かわらず、へんなところで可愛いひと。なんて、こちらは少しばかり冷静に思いながらも、それなりにうれしい。愛しい情人に違いはないわけなのだし・・・。ただ、沖田のほうとしては

毎日、会えるのだ。副長室に入り浸りの沖田隊長なんてのは隊の中では暗黙の了解だった。


ただ、この沖田総司。無邪気ともいえる顔で、一見、鬼副長になついてる奇特な人物としか見えないらしく・・・。
おかしな事に、誰も疑いもしない。

「ひっじかたさぁん、遊んでくださいよー。最近、忙しい。忙しいって、もう。つれないんですからあ! ね?v」

なんて、言葉を聞いてる者たちが疑えるわけもないのかもしれないが・・・。


ところがである、夏の川べりを歩いていた二人少々、浮かれすぎていたらしい。

いつのまにやら、殺気にとりかこまれていた。
まずった、と思いもせずに、静かに沖田のほうはすでに抜刀していた。


土方のほうも、喧嘩なれした男。ひょいと退くと、抜き打ちにあっという間に一人。


だが、沖田返り血もあびず、さっと四人を片付けていたらしい。

ぽんぽんと、己の肩を片手で叩きながら土方は。
「刀、さすがに置いてこれねぇしな」

「そうですね、気がそがれたんじゃないですか?
今日は、やめましょっか」

にっこり、言われたほうはたまらない。
こういう時、清童なんぞと言われる男は厄介だ。

本気で、血がたぎったりなぞが無いらしい・・・。


 ふぅと、溜め息をついた歳三だったが。

「ばーか、ほんとにおめぇは」と女殺しと言われる笑みを浮かべて、ふいうちに沖田の口を吸った。


 こちらも、なれたものである。慌てもせず。にっこり笑い。

「ね、歳さん。俺さぁ、うふふ、あなたといられるだけで、幸せなの、ね? いや?」

ぽかりと、ひとつ軽く沖田の頭を叩いた歳三はずるずると情人をひきずるようにして、歩きだした。
沖田のおねだり、普段は効果絶大でも今夜ばかりはダメらしい。

まぁ、それもいいっかと。沖田のほうもひきずられながら、くすりと笑った。




2006/06/01

恋々。


「血に咽ました、それだけですから・・・。だからお願いです! 私を連れていってください。お願い、置いていかないで」

 
 総司のひっしさと、見たこともないような眼つきにきりと、土方は唇を噛締めた。
 こんな沖田総司は、今まで一度たりとも見たことがなかった。いつも笑顔で明るく、そしてぬける夏の空のようだった男。

 
 可愛い、可愛い弟。ずっとそうやって愛しくてならぬ若者だった、沖田総司という男は。
だが、今の沖田は沖田であって、沖田ではないようだった。

すべてを受け入れて、何も知ることすら厭い。ひたすらに剣を振るい血の海の中にいながら、沖田は一度たりとも懇願もしなければ、幼いときから我儘ひとつ、言ったことがなかった。

その心が痛いほどに、いとおしい男だった。


互いに、一度たりともその想いのいっぺんたりとも言ったことすら、なかった。


叶えてやりたい、叶えてやりてぇ。


だが、沖田はいづれ死ぬ。最期のわがままと本人すらも知っているのだろうことが、よりいっそう切なかった、可愛かった。


だが、「剣のふるえぬお前なぞいらぬ」
土方は、そう言わねばならぬのだ・・・。


ほんとうの心、ひとつでも零したならばよけいに沖田が哀れだろう。

そして想いがあふれれば、こらえ切れぬは己だろう。
可愛い、かわいい男。



(ほんとうは俺こそ、おめぇを離したくねぇんだ)

口に出せぬ思いの、かわりに。
なるものなぞ・・・。


この世にあるものか。

   あってたまるものか・・・・・・。


「総司、おれは鬼だ。おめぇもだろう?」



 がくりと、沖田の肩が落ちた。

憎しみに、一瞬その目が紅く燃えたように見えた。
 沖田総司の心に真実、ふれたのは己がはじめてなのかもしれないと、知った。

途端、


土方は、知った。己もまた、沖田を憎んできたのかもしれないと。いや、憎むほどに愛していたのだと・・・・・・。



 総司、憎いなら俺を殺せと、言ってやりたい。



2006/05/31
惨劇のよる。

長州の志士たち、かれらには昨今

「ぼくは」が流行っていた。


その夜も、ぼくは。ぼくはと血気さかんな論議を、浪士たちは通わせていた。

 自然、若い血潮に燃えた青年たちである・・・。そこに土佐言葉が交じっている。

「おんしら、何をこわがっちゅう。新撰組がなんぜよ? 会津の後ろ楯あっての所詮、何もわかちゃおらん連中じゃき」

「だが、ぼくは彼らが侮れぬ・・・。と思っている」

 妙な憂いをのせて、志士の一人と目される男がぽそりと、思わずのようにもらした。
 だが、たれも聞こえぬほどなのだったのだろう。皆、酒も入っているのだ、聞こえずともいたしかたなかった。
男もきくものなぞ、いないと知っているかのように。
手酌の酒を軽くすすって、己にだけ言ったようであった。

 無意識にこぼれた言葉だった・・・。


なぜか、今夜は暑い。
京とは、こんなあついのだろうかと・・・。

自分は松下村塾の高弟でもある、おのれの見識やら報国の気持ちに自負もある。


ただ、暑いのだ。あつくて、たまらない。
同士たちの言葉すら、どこか上の空にきこえていた。


ふと、ふるさとの情景が男の脳裏をかすめた・・・。
ふと、なつかしい顔が浮かぶ。

愛した女、心酔した師、そして郷里の言葉・・・・・。
なぜ、なのだろう?



あぁ、だがなんと今日は暑い夜だ。
風さえ、吹かない。

どこか、仲間たちを微笑ましく思いながら、男は醒めた。


だから、ひたすら呑んだ。そして静かに聞いていた。
なにやら、今夜はすべてが愛しかった、かつてのすべて。

なかま達・・・。




(あぁ、それにしても暑いな・・・。)
そう、男は思い続けつつも、微笑んだ。


ふいに、風が吹いた。
あ、風だ。





                 涼しいものだ・・・。
        不思議なものだ、こんな夜に。

   男は、ひとりごちた。




2006/05/30
愛しています。

風がなまぬるく、吹いている。
あぁ、呼ばれているのだ。

「もう一度、会いたいから。おれは貴方を今でも恋しい・・・」

今生の最期に、きっと貴方を呼ぶよ。


  けれど、決して貴方、来ちゃいけないよ。




「ね、歳さん、最近あなた、おかしいねェ。そんな苦しいの、もしかして、まさかね。だってあなた、鬼じゃないのよ」

くすくすと、沖田は土方に手枕しながらのたまった。
「なんなら、おれがあなた、斬ってあげよっか?」

くすくすくす・・・・・。


 そんな辛いんなら、いっそのこと全部終わらせてあげよっか・・・。
いいよ、おれも連れていってくれなんて、言わないからさ。

ねぇ、副長、どうします?


愛しています、愛しています、ずっと、だからおれとあなたは
・・・。


だから、あなたは生きて。



   あいして、いました。