2006/08/28 |
意気地無し。 沖田はぼんやりと、その若い娘を見た。 「沖田先生の意気地なし・・・。」そう言いながらその娘は沖田の頬を思い切りはったのだった。 その娘は沖田の密かにかよう町医者の娘。 沖田はおのが病いをしっていた。 沖田より十程もわかいであろう、いとけないような姿だった・・。 沖田はおおいに困惑した、だがやっぱり口元にはかわらぬ笑みが浮かんだらしい。 彼女は唇をひきしめて、ぐいと沖田を睨みつけてきた。 「私、沖田先生が好きです。けれど、いまの先生は嫌い・・・。」 涙ぐんだひとみが痛々しかった。 だが沖田には娘の涙も気持ちも、わからなかった。 ほんとうにわからない。 ただ、ふっと抱きしめてやりたいような気もした。 だが沖田はそうできなかった、そうすることはなぜか罪なような気がしたから。 それで沖田は微笑んだ。 娘はこらえきれぬといったふうに涙を流した・・・。 ふっと沖田は思った。 あぁ、私なんかのために泣かないで欲しいな。 その美しくも儚い涙は、沖田の中に苛立ちに似た何かと一緒に。 言葉に出来ぬ思いのように残った。 (この人は子供なのだ・・・。) ふわりと沖田は今度こそ笑った。 そうです、私は意気地なしなんですよ。もうよいのです・・・。 あァ、あの人もこの子とおんなじ目をしていたなと、沖田は思った。 詰るように・・・。 「いくじなし」 そうか、そうなのかと。 沖田は納得した。 ごめん・・・。 俺はもういいんだ。目の前のひたむきな娘と同じ瞳で沖田を睨んだ相手を、しらず思い浮かべつつ沖田は思った。 (ごめんね・・・。もう、いいんだ) |
2006/08/26 |
ごめんなさい>< ぼーっとしてました! ※拍手、コメントありがとうございます!! ※8月23日の方、本当にすみません。 拍手にお言葉、感謝にございます☆ 「伊庭沖土」でしょうか。はい、わかりました。お詫びもかねましてへたながら、頑張ってみますね!! 続きます(笑) けど、あの宗ちゃんでいいですか?(きくなよって、感じですねw><) 土方さん、ほぼ失恋します(ここ拙めの泣きたいところです。うっかり伊庭沖に歳さん絡めちゃったみたいな) うっうっ>< 沖土大好きなんで。どうしたらいいの〜と。けど伊庭沖ほのぼのラブラブ路線ですし。 ごめんなさい、伊庭沖です。 それでもよかったらよろしくお願いしますね!! ※拍手おしてくださる方、コメント入れてくださる方。読んでくださってる皆様、ほんとうに有難うございます!! つたなくは、ありますがこれからもよろしくお願いします♪ |
2006/08/25 |
残月。 「さんざん浴びたなぁ、脇差しまで抜いたのか」 ほぉというような顔で斎藤は沖田を眺めた。 「何人やったんだ」 「さァね、数えちゃいないよ。あーあロクなもんじゃないですねえ。まったく」 斎藤は低く哂った。 「アンタ、人斬りになったなあ。」 「そうかな、私はかわっちゃいないと思いますけどね」 「そうか、らしいことだよ。沖田さんには」斎藤は興味深げに沖田を見る。 うっとおしげに沖田は着物をはぐようにして、ぬぎ。 「あぁ、慣れないな。このにおいは・・・。」 沖田、めったに返り血なぞ浴びぬ男である。 大勢に囲まれたらしい。 「あんたは好きかと思っていたよ?」口元に淡い微笑をのせて斎藤は言う。 「ふふっ、嫌いですよ。イヤなもんだ。ほんとに」 「なあ沖田さん、俺は好きさ。」 へぇ〜というふうに斎藤を見た沖田は明るく笑った。 「一さんらしいかもしれないですねえ・・・。」 「そうだなぁ。あなたには何故か血の香りがします」 ・・・。好きですよ、そういうあなたも。 すっと血の香りをまとったまま沖田は斎藤に近付き、その頬に手をあてた。 刹那二人は側近く見つめあった。 有明けの月が重なりあう二つの影を仄かに浮かびあがらせた。 |
2006/08/23 |
明日の今日。(七) 「ぐほっ、ごほ、ごほっ・・・。」はげしく宗次郎はせきこんでいた。 「大丈夫かえ、宗さん?」 はっとしたような驚きを隠せないような伊庭の声が聞こえた。 くるしまぎれに、ぐいと押したかひいたか。 自然、離れたらしい。思わず、何を言ってるのだ? と宗次郎は伊庭を睨みつけたが、伊庭の顔を見たとたん思わずなにやら吹き出してしまった宗次郎だった・・・。 あの伊庭八郎が、というような表情をだったのだ。 !!! 「参ったねぇ。オイラらしくもない」赤くなった顔を自覚しているらしい、しきりと伊庭はこまったらしいような様子でほんのり、染まった目元あたりに手をやった。 伊庭は相当らしくなかった。 だが、らしくないのは自分もだと宗次郎はますます笑った。 そんな宗次郎をみていた八郎もとうとう笑い出した。 いつもの柔らかい笑みとは違って、声をたてて笑っている。 「若旦那、今日は聞かないでおきますね」 「そりゃないよ、宗さん」 「だって、おかしいんですもの」 二人、顔を見合わせて笑いながら宗次郎はほっこりと心の底があたたかいような気持ちで、快活に笑う同い年の男を見ていた。 (つづく。かな?) |
2006/08/22 |
紅い泪。 ふうと静かに沖田は息を吐いた。 人を斬ることに慣れすぎた。 だから。 もう、なんの気持ちも消えた。 ただ、隊のために。 ただ貴方のために。 刃はきらめく、沖田自身にすらそう思えた・・・。 かなしみもいとしさも、とうに消え。 ただ言われるがままに・・・。 だからおれは、笑えるのだ。 ただ、熱かった血潮さえも流れていってしまったのだろう・・・。 泣けなかったから、いつだって。 おれは、泣けはしない。 おれは幸福なのだ。 |
2006/08/22 |
拍手やメッセージありがとうございます☆ ※ こんにちは! A様。 不甲斐無さに落ち込むのは私もでございます(^^ゞ そこは開き直りですね、それに私は読むのが大好きなんでv (^^) あ、ありがとうございます! A様もご存知のとおり暇人なのと、R様につくっていただいてますんで。R様、いつもありがとうございます。 お話はヘタの横好きでして(苦笑) あっ、そうだ全ては沖田さん!! ですね。沖田さん好きが嵩じて妄想しちゃったんでw(^^;) あまりそんなに誉めないでくださいませ。 それにあの日記はA様が思っていらっしゃる以上に、なんだろう自画自賛じゃないけど、読みやすくて好きです! A様の斉藤さんのおかげなところが多いですね。 そろそろなりかわるんですよね〜! ちょっとドキドキしますw 頑張りますね。 お互い楽しみましょう! A様の沖田さん楽しみですv 「明日の今日」(つづく)で終わってますから(笑) 続きます。そうおっしゃっていただけて有難うございます! 果報者です^^。 ただ、沖田さんの性格がぴんとこないせいか滑ってるんですよ。どうも。このまんま書いていいものやらと、がっかりな出来になったらお許しくださいませ。 「皓月」有難うございます!! ワンパターンなんですが。胸が苦しくなるほど切ないと思っていただけて。ほんとうにありがとうございます。 「夏の夜」二人が好きと言っていただけてありがとうございます! 夜が似合いますか? ありがとうございます。 A様、いつもありがとうございます! これからもよろしくお願いしますね。 ※拍手くださった方やコメントくださった方、読んでくださってる方にほんとに感謝してます!! 拙いですが、こんごもよろしくお願いしますね★ |
2006/08/21 |
夏の夜。 やれ、風が強くなってきましたねぇ。 しかもしめっぽいなァ。 なんか嫌な気がする。 おめぇは、よっく嫌な気がするじゃねーか。 あはは、大抵あたるデショ? そうだよなぁ、おめーと歩けばやつらと当たるってぇ寸法か。 全くですねぇ、相当な悪運なのかもしれませんね。 ふむ、監察要らずで良いじゃあ、ありませんか。 莫迦、そう安い命じゃねえぞ。オレは。 って、いっても仕方ないですよ〜。 暢気そうに会話しながら土方と沖田は往く。 さわさわと草をゆらしながら風が吹いていた。 月は雲に隠れているのか、闇夜であった。 二、三歩うしろをいく沖田の手にもつ 提灯だけがぼぉと淡い光を放っていた。 すいと沖田が灯を吹き消した。 そのまま投げ捨てると、刀に手を掛ける。 土方はくくっと笑った。 土方も待った。 遠くで、明るいようなもの悲しいような祭り囃しが聞こえた気がした。 そして生臭い血の匂いがあたり一面に満ちた。 「沖田君、いいのかねぇ」しかめつらしく歳三は言った。 「すみません、こんな夜ですし。副長もおりましたので」 二人は同時に吹き出した。 ばっかなヤツもいたもんだぜ、なァ総司。 いや、結構ねらわれますよ〜! なんせおれ有名人ですしねぇ。 ほー、そかそか。そりゃいいじゃねぇか、俺と近藤先生のためならと、しょっちゅう言ってやがるし・・・。 あら、まあ。ヤキモチ? 歳さんだけのためにだって死ねますよ。 ばーか、俺のためなら絶対しぬんじゃねえぞ・・・。 それだけは許さねぇかんな! なぜです? ばっか、おめぇ本気でバカ、けどしかたねーか・・・。 なァ、総司オレのそばにずっといろよな。 はい。ふふっ、言われなくたって離れませんから。ね、土方さん。 |
2006/08/20 |
蝉時雨。 あァ、夏の声だ。 夕暮れ時にもなろうというのに、盛んに聞こえてくる蝉の声。 ふーと息をつきながら、こんなふうに虫の声に心を澄ましたのは遠い昔のよう。 だと、沖田は思った。 寂しいのでも哀しいのでもないと思った、ただ変わりすぎた。 自分も土方も、そして若いころあれほど焦がれた剣士だったはずの斉藤も・・・。 ただ、夏の声はかわらないのだ。 かわったのは自分だ。 己を憐れむのは簡単だった。 だが、懐かしむにはあまりに過去は美し過ぎて・・・。 だからただ、沖田は蝉の声を静かに聴いていた・・・。 (もし、俺に未来があるならば、このセミのように生きたい。) 感傷かもしれなかったが、沖田はふっと、そう思った。 だが沖田が次に浮かべた笑みは、そのやさしい感傷をふりきるように色がなかった。 |
2006/08/18 |
お言葉や、拍手ほんとに有難うございます!! ※あ、ありがとうございます! 「RIKA LAND」のR様のご厚意でつくっていただいている企画サイトということで。Rさま、いつもほんとに感謝してます!! ありがとうございますv わたしめ、さいしょは本気で三ヶ月限定と思ってたのですが・・・。 近頃こそこそ、つくってます(^^) 理由は最初に書きたいと思っていた話がまったく、書けてないのと。書きたいっ! というお話がもっと、増えてきちゃいました〜。 ただ微妙にはずかしいうえに、知識がなしなんで。。。 インターバルをいただくやもしれません>< すみません。 ただそうおっしゃっていただけて、すごくうれしいです! 有難うございました! ※拍手やお言葉、とっても励みになっています☆ ほんと拙いですが、これからも妄想のままに書きますんで。 よければのぞいてやってくださいませv (毎日は無理になってきちゃいましたが、すみません。>< なんか夏に弱いんで、ちょっとだけ体がへんでして^^;。。・ほんとにすみません、ですが頑張りますね!) ほんとに有難うございました。 |
2006/08/14 |
皓月。 「今夜は月が無いなァ、おれは月が好きなんですよ」 ふいと思いついたよに沖田は笑みを浮かべて言った。 その沖田の屈託ない穏やかな笑みに、なぜか土方は胸を刺すかのような痛みを覚えた。 皓々と光る月の下で、沖田の刀はそれは哀しくきらめく。 だが斬らせる側の自分は何と身勝手なのか。 敵、味方の血をさんざんに吸いながら沖田の美しい剣はさらに研ぎ澄まされていくようだった。 その美しさを土方は好んでいた。 好んでいた。 愛しい。せり上げるように土方は思った。 しだが、今。沖田を今もとめるは、罪な気がした。 今夜、沖田は人斬りに往くのだ。土方の命で。しかも隊内にあった者を・・・。 だが土方は、沖田が欲しいと思った。ひたすら欲しかった。 だが沖田は相変わらず、土方の思いなど気付かぬといったふうに 「あァ、おれ、月が好きだ」 澄んだ瞳で空を見上げていた。 たまらなくなった。 ぐっと引き寄せその背に腕をまわす・・・。 沖田は不思議と静かに土方を抱きとめた。 そして「あァ俺、月が好きだ。こんな夜が好きだ」 きつく土方は抱きしめられた。 「俺は月が好きですよ」 皓々と白い月が、輝いていた。 雲が晴れたのだ。 ……いってきます。 沖田の声は月の光をはじくように明るかった。 |